反応速度論 の実験



  1. 時計反応:

   試薬を混合したのち、ある一定の時間を経過して その反応が完結するものの 実験を行なう。

  (1) メチレンブルーの脱色実験:

  ● 0.4mol/l NaOH 50ml、 グルコース(C6H12O6、ブドウ糖) 0.75g を フラスコに入れ、1% メチレンブルー液を 2−3滴 加え、ゴム栓をして 3、4回 強く振って 空気を巻き込むと、メチレンブルーは 酸化状態となって 青色を呈する。 しかし これをそのまま置いて 30〜50秒くらい経つと、強アルカリ性で メチレンブルー酸化体は グルコースによって還元され、無色に戻る。 これは何回か(フラスコ内に酸素がある限り)繰り返して反応する。 (* メチレンブルーは魚水槽用の消毒剤(アリエク)を使った。)

  酸化反応は一瞬で、還元反応は 時間をかけて行なわれ、反応速度の違いにより 一見不思議な現象となる。

  

  * また、インジゴカルミンを用いて同じ条件で振ると、黄色から赤、緑へと変化(酸化)し、グルコースによってゆっくり還元されて 緑から赤、黄色の順に戻る(還元)。(参考ページ



  (2) ヨウ素酸 ‐ 亜硫酸 反応:

  ヨウ素酸カリウム KIO3 と 亜硫酸ガス SO2 によって ヨウ素 I2 を析出する 全体の反応は、

    2 KIO3 + 5 SO2 + 4 H2O → I2 + K2SO4 + 4 H2SO4

  ヨウ素酸カリウム KIO3 と 亜硫酸水素ナトリウム NaHSO3 の場合は、その反応を分解して、

    KIO3 + 3 NaHSO3 → I + 3 SO42− + K + 3 Na + 3 H   ・・・・ (1)

    5I + 6 H + KIO3 → 3 I2 + K + 3 H2O    ・・・・・・ (2)

  ヨウ素酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウムが反応では、まず式(1)だけが進行し、亜硫酸水素イオン(HSO3-)が反応容器にある限り続き、亜硫酸水素イオン(HSO3-)が消費される。 次に、式(2)の反応が進行しヨウ素が発生し始め、鋭敏なヨウ素デンプン反応により突然、濃青色に変化する。 この(1)の、亜硫酸水素イオンの消費反応律速となって、一定の時間の後に、ヨウ素デンプン反応が急に起こることになる。

  ● (実験)
  A液: 亜硫酸水素ナトリウム NaHSO3 (* 市販のピロ亜硫酸ナトリウム Na2S2O5 から作る、 +H2O → 2 NaHSO3溶液) 0.05mol/l = (Na2S2O5として) 0.5g/100ml、
  B液: ヨウ素酸カリウム KIO3 0.05mol/l = 1g/100ml、
  デンプン液: 1%デンプン液、 を作っておく。
  B液 0.5ml、水 3ml、デンプン液 1滴を 小試験管に入れよく混ぜておき、測定時にA液を加えて素早く2、3回振り混ぜ、すぐに、ストップウォッチで変色までの時間測定をする。 または、動かしている色判別機電子53.光センサ 3.で作成、 PCソフト )に素早く挿入する。 次に、B液の量を0.2mlに増やして同様に測定する。 さらに、0.3、0.4、0.5mlで測定する。(その逆の、A液の量を振って、B液を0.5mlに固定して同様に測定しても良い。)

  A    B    純水  時間(無色→青)
 0.1ml  0.5ml  3.0ml   約100秒
 0.2  0.5  3.1    約70秒
 0.3  0.5  3.2    約60秒
 0.5  0.5  3.4    約30秒

  結果は、ヨウ素デンプン反応で青色になるまでの時間がかかり(= ヨウ素酸 ‐ 亜硫酸 反応が律速段階となって)、片側の液が少ないとゆっくり反応し、多いと速く反応が進んだ。 この関係をグラフに書いて、次の反応速度の式で現わす。

    反応速度式   v = k [KIO3]α[NaHSO3]β   ・・・・ 結果から、この寄与度 α、βを決める事ができる。 (* 正確に fitting するには、もっと量を増やす必要がある)

  
  

  ・ 因みに、2年前に作ったルミノール溶液(A液)(→ 人造色素2.(2))がまだ残っていたので、B液(赤血塩+過酸化水素+水)を作り 混合して、5〜10秒くらいまで 再びよく光った。 ただ、元々光は弱いので、白色LEDを消して、同じ試験管を用いて 色判別器にはかからなかった。 これは通常の化学反応のとおり、指数関数的に単調減少する変化である。 同様に、A液、B液の濃度が高いほど 速く減衰し、減衰曲線は急峻になると予想される。



  2. 振動反応:


  (予備実験)  本題と直接関係ないが、実験に使う臭素酸カリウム KBrO3の値段が(世界的に”パンの防カビ剤”としての用途が無くなって)高騰しているため、手持ちの臭化カリウムから電解酸化によって自作することにした。 陽極は、ハロゲンの実験 3. で次亜塩素酸塩を作るのに使った ルテニウム・イリジウム酸化物チタンメッシュ電極(5×10cm)を用いた。(陰極は白金・ステンレスメッシュ)
  臭化カリウム KBr 100g/250ml の水溶液を300mlトールビーカーに入れ、電極をセットして 撹拌しながら 約24時間電解酸化する。(3〜3.5V、4A前後) 塩素酸カリウムと違って、電解で温まった状態ですでに 溶解度の低い臭素酸カリウム KBrO3 の沈殿ができている。 この不均化反応を完結するために 加熱して一旦溶かし、5分間以上煮沸して冷却する。(不均化が終結すると 次亜臭素酸イオンの黄色が消えて、母液は無色になる。) 陽極からのチタン酸化物等を除くため、コーヒーフィルターを2重にしたもので熱時ろ過し、冷却すると臭素酸カリウムの結晶ができるのでガラスフィルターでろ過する。 結晶を集め 再度 熱水に溶かし、念のため さらに5分間煮沸して熱時ろ過、冷却、ろ過し、冷水及びエタノールで洗浄、風乾する。 以上の操作を計4回繰り返す。(24時間×4回、2回目と4回目は母液を再度電解する。臭化カリウム溶液 KBr 100g/250mlは計2回作る。) KBrO3 の収量: 計約80g。
   


  (1) BZ 反応(ベロウソフ・ジャボチンスキー反応)

  これは、セリウム塩などの金属塩と臭化物イオンを触媒としてマロン酸などのカルボン酸を臭素酸塩によりブロモ化する化学反応で、酸化剤と還元剤の割合が適当ならば、溶液の酸化状態と還元状態が交互に現われ、ある周期で振動する。 酸化還元指示薬の フェロイン溶液を入れておけば、その色の周期的変化で 酸化還元が繰り返し起こっていることが確認される。 下のグラフは、1.(2)で用いた 色判別器で、外側(左側)から白色光(白色ダイオード、Ra>90)を当てて右側のカラーセンサで測定したもの。 この処方の場合、急に青(酸化状態)になり、また やや緩やかに赤橙(還元状態)になることを、約40秒周期で繰り返した。 (既製のフェロイン溶液に入っている塩素イオンの影響が若干ある。)

  ● 1N(0.5mol/l) 硫酸 H2SO4 100mlを 200mlトールビーカーに入れ、これに 臭素酸カリウム KBrO3(酸化剤)3〜3.5g、 臭化カリウム KBr(触媒) 0.24g を入れて、撹拌子を入れてよく溶かす。 溶けたら、マロン酸 C3H4O4(還元剤) 0.8g、 セリウム溶液(触媒、 硫酸セリウムCe(SO4)2・4H2O 2.0gを 1N H2SO4 60mlに溶かした溶液)を 10ml加え、さらに フェロイン溶液(指示薬(兼 触媒)、1、10‐フェナントロリン鉄(U)硫酸塩1.7%溶液、既製品 塩酸含むHCl0.8%(キシダ化学))を 1ml加えて、強めに撹拌すると、すぐに色の変化が現れる。

  もし、赤橙色(還元状態)のまま、あるいは 青色(酸化状態)の時間が短い ならば、酸化剤である 臭素酸カリウムを0.5g程度加える。 逆に青色優勢ならば マロン酸を少量加える。
  反応は CO2ガスの発生が伴い、一部漏れた臭素臭がする。 途中で色が酸化されて薄くなったなら、フェロイン溶液を追加する。 30回以上変化して、最後は 薄青〜黄色(黄色はセリウム(W))の酸化状態になって終わった。(マロン酸を少量追加すればもう少し変動する。) マロン酸の代わりに リンゴ酸でもできる。




  この現象が発見されたのは 1951年、1961年(再発見)であるが、詳細な機構が明らかにされたのは 1972年だった。 反応は18のステップに分かれるが、主な反応式は次のとおり。

    BrO3 + 5 Br(触媒) + 6 H → 3 Br2 + 3 H2O   ・・・・・ プロセスA

  強酸性下で、臭素酸塩は臭化物イオンによって亜臭素酸、次亜臭素酸、臭素と順次還元され、プロセスAは系内に存在している臭化物イオンが消費されつくすと停止する。

    BrO3 + 4 Ce3+(触媒) + 5 H → 4 Ce4+ + HOBr (次亜臭素酸) + 2 H2O   ・・・・・ プロセスB

  これは還元型の金属塩による臭素酸塩の次亜臭素酸への還元プロセスである。 臭化物イオンが無くなりプロセスAが停止すると亜臭素酸が増加し、それとともにプロセスBの反応速度は急上昇し、溶液の色が酸化型に変化する。

    HOOC・CH2・COOH + Br2 → HOOC・CHBr・COOH (ブロモマロン酸) + H + Br

  一方で、プロセスAで生じた 臭素は、マロン酸と反応してブロモマロン酸となり、

    HOOC・CH2・COOH + 6 Ce4+ + 2 H2O → HCOOH (ギ酸) + 2 CO2 ↑ + 6 Ce3+ + 6 H

    HOOC・CHBr・COOH + 4 Ce4+ + 2 H2O → HCOOH + 2 CO2 ↑ + 4 Ce3+ + Br + 5 H

  マロン酸とブロモマロン酸は酸化型の金属塩によって酸化されてギ酸と二酸化炭素(CO2の泡が発生する)となり、還元型の金属塩と臭化物イオンが再生され、溶液の色が還元型に戻る。 臭化物イオンが再生されるとプロセスAが再開するため、亜臭素酸が臭素まで還元されプロセスBが停止する。 A、B繰り返しのこのパターンは、酸化剤、還元剤のどちらか一方が無くなるまで続く。


  (1’) シャーレによる反応:

  ● 0.8mol/l臭素酸カリウム KBrO3 2ml、 0.2mol/l 臭化カリウム KBr 1ml、 0.2mol/l マロン酸 2ml、 3mol/l 硫酸 H2SO4 1ml を混ぜ、黄色が消えて無色になったら フェロイン 1ml、 (上記の)硫酸セリウム(W)2g/60ml1M H2SO4 0.5ml を加え、混ぜ合わせて、シャーレに静かに入れる。 (硫酸セリウムを入れたためか?)あまり明瞭ではないが、同心円に近い縞模様ができる。 既製のフェロイン溶液に塩素イオンが入っているためか、セリウム溶液を入れる必要があった。

   


  (2) ヨウ素酸 ‐ マロン酸 バージョン:

  ● A液: ヨウ素酸カリウム KIO3 4.3g/純水溶液 80mlに +50%硫酸 H2SO4 0.6ml を加え、純水を足して 100mlとする。
  B液: マロン酸 CH2(COOH)2 1.6g + 塩化マンガン(*) MnCl2・4H2O 0.6g/80ml水溶液とし、これに、別ビーカーで デンプン1gをバーナーで加熱しながら 水20mlに溶かしたものを加え、全部で100mlとする。
  C液: 30%過酸化水素水 H2O2 33mlに純水を加えて 100mlとする。
  A液、B液 各20mlを 200mlトールビーカーに入れ、強めに撹拌しながら、C液 20mlを加える。 デンプンがかなり入った どろどろの溶液であるが、デンプンの役割のメカニズムは不明。

  結果は失敗で、4回ほど急速に減衰振動した後は、青のままになって継続的に振動を続けなかった。 炭酸ガスの泡を出し、最後にはどろどろの青黒い液となり、褐色のヨウ素の結晶が析出して終わった。  ・・・ マッド(泥)サイエンティストだ(?)
  おそらく、*の塩素イオンが触媒として影響して、バランスを崩してこうなったと思われる。 次回は、これを 硫酸マンガン MnSO4 に変更して試してみたい。

 



  3. リーゼガング現象:


  リーゼガング現象も、イオンの拡散速度沈殿速度(過飽和度)のバランスによる現象と考えられるが、なぜ縞模様になるかは諸説あり、1896年に発見されてから未だ その詳細なメカニズムは分かっていない。 自然の中にもリーゼガング現象が存在し、縞めのう等が マグマ由来の熱水からできるのを見ることができる。 岩石の空洞にシリカを含む熱水が入って微結晶を析出・堆積し、縞状の模様の鉱物になる。

  ● 粉ゼラチン 3gを 20mlの熱湯に溶かし、10%二クロム酸ナトリウム(Na2Cr2O7)溶液を 0.5ml加え、平らな所でシャーレに 液の厚さ1mm程度になるように流し入れて固める。 冷えて固まったら、中央に 25%硝酸銀(AgNO3)溶液を 1滴だけ付け、氷水(あるいは冷蔵庫)で約5℃に冷やして静置する。
  ・・・・ 冷えている時間は、細かい同心円の輪になってクロム酸銀(Ag2CrO4)の沈殿が外側に向かってできていく。 外側ほど輪の間隔が広くなる。 輪の外側の褐色域は氷が解けて温度が上がったためで、常温で行なうと一様に沈殿して輪にならない。

  ● 粉末寒天 0.8gを 50mlの水に入れ 加熱してよく溶かす。 これに 硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O) 4.5gを入れて溶かし、試験管に注ぐ。 もう一方の試験管には、フェノールフタレインを2、3滴入れたものを注ぐ。(アンモニアの拡散具合を見るため)
  冷えて固まったら、上部にアンモニア水の原液(28%、取扱注意)を多めに入れ、(蒸気圧で栓が飛ばないように)きつくゴム栓をする。

  ・・・・ 数時間で0、1番目の沈殿層ができ、24時間以上経って 急に、1時間以内で 2番目の沈殿層ができた。 アンモニアの拡散に伴って、過飽和状態からその場所に急にできるのであり、沈殿がゆっくり移動するのではないことがわかった。 また7日後には 3番目の沈殿層ができた。 層の位置間隔は 等比級数的に広がっている。(xn+1/x = p p は定数) spacing law、 その他に、出現時間を決める time law、 幅を決める width law、 内部・外部電解質の濃度の影響 Matalon-Packter law がある。)
  Mg(OH)2 が十分沈殿するには、 pH12〜13が必要。(3.(3)で沈殿完了、 フェノールフタレインの変色域 pH=8.3−10、 pH>13.4では 再び無色)

   * (容器の形状効果) ビーカーや三角フラスコでもできるが、すべて”すゑ広がり”の容器ででき、逆に 先詰まりの容器(メートルグラスなど)ではできない。






    § 宇宙のエントロピー増大:


  物質を溶融状態から急冷すると、結晶化速度よりも 固体化速度が著しく速い場合、準安定状態の、非晶質のアモルファス状態になります。 例えば 硫黄は沸点近くの高温から 水中に投入すると、ゴム状硫黄になります。 またガラスは非晶質の固体です。 また、金属や合金のあるものは、高温の溶融状態から水冷ドラムへ高圧でノズルから吹き付けると、リボン状の アモルファス金属になります。磁性合金のアモルファスは低損失のトランス・コアなどに実用化されています。
  ただし、非晶質に固化したこれらは、常温で安定な相へと、時間とともに 結晶化していきます。(ゴム状硫黄は斜方硫黄へ。 ガラスも数十年たつと一部結晶化して割れやすくなります。)

  上記の振動反応等も、一見、指示薬の色で激しく変化し続けているように見えますが、実際は 振動減衰で、着実に反応物の量は減っていき、その包絡線は 負の指数関数的に減衰していきます。

  宇宙の万物も、この「エントロピー増大則」により、時間を前に前に辿っていくと、原初の宇宙というものが初期条件として存在し、この最もエントロピーの小さい状態から始まって、それからどんどん混合したり反応したりして乱雑さが増大して、(エネルギーは同じであっても)宇宙全体が拡大し、疲弊していきます。 この原初の宇宙、宇宙の事始めは、いわゆる”ビッグバン説”によって説明されてきましたが、その理論には多くの矛盾点が噴出し、現在はほぼ間違いであることが分かってきました。 またその膨大なエネルギーがどのようにしていきなり発生したかについても、多次元の超高エネルギー粒子、”インフラトン”という机上の空論を持ち出して説明しようとしています。
  また、DNAが自然発生的に決してできないものであることも、生成の確率論から、長い時間をかけさえすれば 無秩序から秩序ができるとする”進化論”が、完全に間違いであることになります。確率を計算すると、はるかに及びません。 エントロピー増大則に逆らって、無秩序から自然発生的に秩序が生まれることは、非常に困難なことだからです。


  では 今ある世界はどうやってできたのでしょうか? 答えは、消去法により、きわめて単純です。 ある偉大な創造主、「サムスィング・グレート」によって、「大人の宇宙」として突然創造された、ということになります。宇宙、天体のみならず、植物や動物、人も、何もかも。 すなわち、聖書の冒頭にある、「全能の神による大創造」です。


      「初めに、神が 天と地を創造した。」 (創世記1:1)

      「彼(神)は北の天を虚空に張り、地を何もない所に掛けられる。」(ヨブ記26:7)  ・・・・  地動説

      「は、主の道の初めから、天地創造の以前から、私と共におられた。」(箴言8:22) ・・・・ 御子が永遠の昔から 神であること

      「永遠の初めから、ことばがあり続けた。ことばは父なる神と共にあった。神である方、それが ことばであった。」(ヨハネ1:1)

      「万物はすべて、御子にあって造られたからです。」 (コロサイ1:16)



    (参考)   膨張宇宙論の否定、 インフレーション理論の困難、    アルカリ金属の実験の下の§、 DNAについて




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